帳簿及び収支内訳書(農業所得用)の書き方
最終更新日:2022年12月7日
1年間に生じた所得を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、また、取引に伴い作成したり、受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。収支計算の根拠になる帳簿、領収書等は5年間(記帳制度適用者が記帳制度に基づいて作成した帳簿については7年間)保存する必要があります。適切に保管してください。
収支内訳書には1年間の合計のみ記載しますが、帳簿には取引ごとの内訳を記載します。日々の収入・支出の記帳が必要となっています。帳簿の整理、確認を行ってください。
平成26年1月1日以降の所得から、全ての人が収入や経費を記した帳簿をつけることが義務化されています。
用紙や手引は国税庁のページからダウンロードできます。また、このページの一番下でも様式のダウンロードができます。
帳簿の記帳
所得は、売り上げなどの収入から、その収入を得るために費やした元手を差し引いたものです。所得を知るためには、それぞれの収入と元になる元手を結びつけなければなりません。そのために必要な情報を記したものが帳簿です。
帳簿への記帳は取引ごとに分けて記載するのが基本です。様式例には日付欄がありますが、1日の取引をすべて1行(または1列)に記載する必要はありません。特に複数の店で購入した日などは、店ごとに行(または列)を変えて記載するとよいでしょう。
帳簿の書き方は、第三者が見ても容易にわかるようにしてあればどのようなものでも構いません。様式例や市販の帳簿などを参考にされるとよいでしょう。様式例では1枚の紙に書ける日数は多くありませんので、そのまま使うときには用紙が何枚にもわたることになります。
家庭菜園に係る収入・経費について
家庭菜園に係る収入・経費について、事業所得に属する農業として計上されている方がおられますが、事業所得とは有償性や営利性等があるものとなっており、収益を目的としない家庭菜園の収入・経費は雑所得へ計上することとなります。
家庭菜園に係る収入・経費 = 雑所得(家庭菜園が赤字となった場合、「雑所得」以外の所得とは損益通算することができません。)
家事用の経費について
家事用の経費は事業の必要経費に含めません。必要経費の中に次のような費用が含まれている場合は、これらの金額を除外します。
- 衣料費や食費などの家事上の費用
- 農業用建物兼住宅について支払った賃借料や固定資産税、修繕費などのうち、住宅部分に対応する費用
- 水道料や電気料、燃料費などに含まれている家事分の費用
※上の2.や3.などの費用を家事関連費といいますが、家事関連の家事分と事業分との区分は、使用面積や保険金額、使用期間、点灯時間などの適切な基準によって按分して計算します。
収支内訳書の作成
減価償却費などの例外を除いて、収支内訳書は帳簿の合計額を転記して作成します。帳簿にはあらかじめ小計や累計を記載する行(または列)を作っておくと便利です。
内訳欄の書き方
雇人費の内訳
雇人費(8)の内訳を記載します。
氏名・住所又は作業名欄には、期間雇人(年雇人)の場合は住所氏名、臨時雇人の場合は作業名を記載します。
小作料・賃借料の内訳
小作料・賃借料(9)の内訳を記載します。
小作料・賃借料等の別の欄には小作料・賃耕料、機械等の借上賃などの別を記入します。
事業専従者の氏名等
あなたと生計を一にしている配偶者や、その他の15歳以上の親族が、本年中に6か月を超える期間事業に専ら従事している場合、その者を事業専従者とすることができます。事業専従者がいる場合、続柄やその年の事業収益に基づいた金額を必要経費にすることができます。
事業専従者とする配偶者や親族の氏名、年齢、あなたから見た続柄、事業に専ら従事した期間を記載します。
事業専従者とした者は、配偶者控除や扶養控除の対象とすることができません。また、各事業専従者は必要経費となった額の給与を受け取ったものとみなされます。
収入金額の明細
1ページの収入金額の欄(1)、(2)、(3)、(5)、(6)の内訳を品種毎などに分けて記載します。
露地栽培のものは田畑欄に、温室やビニールハウス等で栽培したものは特殊施設欄に記載します。
減価償却費の計算
経費を減価償却費として計上する資産を資産ごとに記載し、今年計上する減価償却費を算出します。
減価償却費の計算方法についてをご覧ください。
果樹・牛馬等の育成費用の計算
成熟した後そのまま使用する果樹・牛馬等は、成熟後減価償却資産となります。その取得価格は育成に要した経費と同額になるので、成熟までの間この欄で管理します。
肉用牛の売却の特例
肉用牛の売却については特例の適用があります。(証明書の添付が必要です。)農業収支を別様に作成する外、「肉用牛の売却による所得の税額計算書」を作成してください。
各科目の具体例
項 目 |
具体的な内容 |
参考事項 |
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---|---|---|---|---|
販 売 金 額 |
(1) |
本年中の販売金額を記入します。(販売後まだ代金を受け取っていない場合も本年中の販売金額になります。) 【販売品目】 米、野菜、加工品(しめ縄・餅など)、タマゴ等、(繁殖牛等は別計算とします。) 農協、無人市、ふれあい市、営農組合、グループ又は生産組合への販売等 出荷名義人が家族(同一世帯)の名前であっても一事業主で計上してください。 |
収支内訳書2ページ「収入金額の明細」欄には、品目ごとに記入し合計を出してください。 |
|
家 事 消 費 事業消費金額 |
(2) |
家事用に消費した農産物の量を金額で表したものです。 自家保有米、野菜等 (身内、親戚、知人への贈答分を含みます。) 金額は販売実績を基に計算するか、市場価格で計算してください。(農協、野菜市等参考にしてください。) 帳簿には年末に一括して計上して差し支えありません。 |
||
雑 収 入 |
(3) |
次のような収入を記入します。
借入金は収入にはなりません。 |
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農産物の棚卸高 |
期首 |
(5) |
収穫時の生産者販売価格により計算して記入します。 |
穀物(米麦等)以外の農作物で数量がわずかなものについては、棚卸を省略しても差し支えありません。 |
期末 |
(6) |
項目 |
具体的な内容 |
参考事項 |
|
---|---|---|---|
雇人費 |
(8) |
常時雇人・臨時雇人などの労賃及び賄費 |
生計を一にする人は対象外です。交換労務(手間替え)等相殺されるものは含みません。 |
小作料・賃借料 |
(9) |
農地の賃借料、農業用の土地建物の賃借料、農機具等の賃借料、農協などの共同利用施設利用料 |
支払いを現物支給(米等)した場合は市場価格で計算してください。 |
減価償却費 |
(10) |
建物、農機具、車両、繁殖牛などの償却費 |
農業専用割合には十分注意してください。 減価償却費の計算方法についてをご覧ください。 |
貸倒金 |
(11) |
売掛金などの貸倒損失 |
|
利子割引料 |
(12) |
農業用の借入金に係る支払利息 土地改良事業の償還金の利息部分 |
元金の返済金は、必要経費にはなりません。 |
租税公課 |
イ |
固定資産税・不動産取得税・軽自動車税・水利費・農協組合費等 |
所得税、住民税、健康保険税・料、国民年金保険料、加算税、罰金等は必要経費にはなりません。 軽自動車税や自動車税は事業専用割合で按分してください。 |
種苗費 |
ロ |
種もみ、その他の種子、苗類、種いもなどの購入費用 |
自家採取分は経費にはなりません。 |
素畜費 |
ハ |
子牛、子豚、雛鳥などの取得費及び種付料 |
翌年以降も保有する場合は、棚卸し又は育成費用の計算が必要です。 |
肥料費 |
ニ |
化学肥料・たい肥の購入 |
|
飼料費 |
ホ |
飼料の購入費 |
販売用動物又は育成中の動物の飼料は、棚卸し又は育成費用の計算の対象になります。 |
農具費 |
ヘ |
使用可能期間が1年未満か取得価格が10万円未満の農具の購入費 |
諸材料費に計上するものより長期・繰り返して使用する性質の高いものです |
農薬衛生費 |
ト |
農薬の購入費用や共同防除費 家畜の予防接種費 |
|
諸材料費 |
チ |
ビニール、むしろ、なわ、釘、針金などの諸材料の購入費用 圃場で使用する消耗品としての性質の高いものです |
家事関連費は除いてください。 |
修繕費 |
リ |
農機具、農用自動車・農用建物及び施設などの修理に要した費用 |
|
動力光熱費 |
ヌ |
農業に使用した水道、電気、各種燃料費等 |
|
作業用衣料費 |
ル |
農作業に必要な衣類、長靴、手袋等 |
|
農業共済掛金 |
ヲ |
水稲、果樹等の共済掛金・農業用資産に対する共済掛金等 |
|
荷造運賃手数料 |
ワ |
出荷用ダンボールなどの包装材料・農協及び市場手数料等 |
|
土地改良費 |
カ |
土地改良事業の費用や客土費用 |
土地取得費・造成費は経費ではありません。 |
雑 費 |
ツ |
農業経営上の費用で他の経費に当てはまらない経費 |
|
農産物以外の棚卸高 |
ネ ナ |
販売の目的で飼育する牛、豚、鶏などについては、取得価格に年末までの育成費用を加算して記入してください。 |
毎年同程度の規模で作付けをする未収穫農産物や毎年同程度の数量を翌年へ繰り越す農産物以外の資材については、棚卸を省略しても差し支えありません。 |
経費から差し引く果樹・牛馬等の育成費用 |
ラ |
イ~ツの金額のうち、裏面の果樹・牛馬等の育成費用に記載した金額 |
収支内訳書2ページの果樹・牛馬等の育成費用のラ欄の額を転記します |
専従者控除 |
(16) |
各専従者について、次のいずれか小さいほうの額を合計した額
|
内訳書の書き方には主なものをあげています。不明な収入・経費がありましたら役場財務課・各支所窓口グループへお尋ねください。
減価償却費の計算方法について
農業用建物、農機具、車両等の2年以上にわたって使用する資産の取得費は、その年に全額を経費とせず減価償却費として何年かに分けて経費計上します。
ただし、取得費が10万円未満の資産は農具費等としてその年に全額経費とします。
定額法による減価償却費の計算方法
平成19年4月1日以降に取得したもの(定額法)
取得金額×定額法償却率×(使用月数/12)×農業専用割合
取得金額から各年分の償却費の累計額を控除した額(未償却残高)が1円になるまで、減価償却の計算を続けます。
平成19年3月31日以前に取得したもの(旧定額法)
{取得金額―※残存価格(取得価格×10%)}×旧定額法償却率
×(使用月数/12)×農業専用割合
償却費の累計額が取得金額の95%(※償却可能限度額)になるまで、減価償却の計算を続けます。
※生物(牛馬、果樹など)の残存価格や償却可能限度額は別の計算式で計算します。
償却費の累計額が取得金額の95%(償却可能限度額)に達した場合は、達した年の翌年から次の算式により償却費を計算し、未償却残高が1円となるまで償却を行います。
(取得価額-取得金額の95%相当額-1円)÷5×農業専用割合
一括償却の特例
取得費が10万円以上20万円未満の資産の償却は取得金額の1/3を3年間に分けて経費計上する方法(一括償却)もあります。
この場合は、月割計算を行わず、未償却残高が0円となるまで償却します。
減価償却費の計算欄の記載方法
項目 | 具体的な内容 | 参考事項 | |
---|---|---|---|
減価償却資産の名称等 | トラクター、コンバイン、格納庫 等 | ||
面積又は数量 | 資産の面積又は数量 | 同一の機械装置を複数購入した場合などは1以外の数量が入ります。 | |
取得(成熟)年月 | 育成していた果樹・牛馬等であれば成熟に達した年月、それ以外の資産については取得年月 | ||
イ | 取得価額 | 資産を取得するのに要した金額 |
|
ロ | 償却の基礎となる金額 | 定額法の場合、平成19年3月末までに取得した資産についてはイの金額-残存価格(イの金額× 10%)、平成19年4月以降に取得した資産についてはイの金額そのまま | |
償却方法 | 税務署に届け出た償却方法 | 届出を出していない場合は定額法となります。 | |
耐用年数 |
主な資産の耐用年数及び償却率を参照してください 一括償却の特例を適用したものの償却率は「1/3」と記載します。 |
中古資産は耐用年数が短くなります | |
ハ | 償却率又は改定償却率 | ||
ニ | 本年中の償却期間 |
|
月の途中に取得・廃棄等となった場合はその月は期間に含まれますが、償却期間の累計が耐用年数を超えることが無いよう調整します。 |
ホ | 本年分の普通償却費 | ロ×ハ×ニの金額(端数切り上げ)を記載します。 平成19年3月末日以前に取得した資産で、償却期間を経過した後5年間の均等償却をするものの償却費もここに記載します。 |
未償却残高が1円になるまで計上できます。 |
ヘ | 特別償却費 | ホ以外分の償却費を記載します。 | 適用する特例の明細等が必要です。 |
ト | 本年分の償却費合計 | ホ+ヘの額を記載します。 | 未償却残高が1円になるまで計上できます。 |
チ | 事業専用割合 | その資産を事業のために使用した割合を記載します。 事業にのみ使用した場合は100%です。 |
使用時間や走行距離などで割合を計算してください。 |
リ | 本年分の必要経費算入額 | ト×チの額(端数切り上げ)を記載します。 | 合計額を表面の減価償却費の欄に転記します。 |
ヌ | 未償却残高 | 以下のどちらかを記載します。
|
差し引くのはリの額ではなくトの額です。 最低でも1円(備忘価格)残ります。 |
構造・用途 |
細目 |
耐用年数 |
償却率 |
|
---|---|---|---|---|
定額法 (平成19年4月以降に取得) |
旧定額法 (平成19年3月以前に取得) |
|||
木造建物 |
車庫用 |
17年 |
0.059 |
0.058 |
倉庫用・作業場用 |
15年 |
0.067 |
0.066 |
|
車両 |
軽自動車 |
4年 |
0.250 |
- |
貨物自動車 |
5年 |
0.200 |
- |
|
コンクリート造の構築物(農林業用) |
畦畔、用水路など |
17年 |
0.059 |
0.058 |
農機具 |
全ての農機具 |
7年 |
0.143 |
- |
器具・備品 |
きのこ栽培用ほだ木 |
3年 |
0.334 |
- |
生物 |
役肉用牛(繁殖用) |
6年 |
0.167 |
- |
キウイフルーツ樹 |
22年 |
0.046 |
0.046 |
|
ブルーベリー樹 |
25年 |
0.040 |
0.040 |
農家が使用する減価償却資産の主なものを掲げています。不明な資産については役場財務課・各支所窓口グループへお尋ねください。
中古品購入の耐用年数(償却率)
- 法定耐用年数を全部経過したもの
(法定耐用年数)×0.2 - 法定耐用年数の一部を経過したもの
(法定耐用年数)-(経過年数×0.8)
注1)計算で生じる1年未満の端数は切り捨てます。
注2)計算の結果が2年未満となった場合は、耐用年数を2年とします。
注3)一括償却の特例を適用する場合は、中古品購入の耐用年数は使用しません。
町事業等の自己負担金の経費計上
以下の2.~5.の自己負担金については、元金分の総額を減価償却資産の取得費として、取得時の属する年から必要経費に算定します。また、減価償却資産取得のための借入を行った場合と同様に、元金部分は減価償却費として必要経費に算定するため、各年の返済金については、借入に係る支払利息のみ必要経費として算入することができます。なお、本年中に請求のあった特定中山間保全整備事業(平成15~25年度)の自己負担金についても同様の取り扱いとなります。
1. | 区画整理 | 農業所得の必要経費となりません。(土地の取得費となるため) |
2. | 暗渠排水 | 構築物(農林業用のもの)の耐用年数で減価償却を行います。 |
3. | 鳥獣害防止施設 | 構築物(農林業用のもの)の耐用年数で減価償却を行います。 |
4. | 用排水路整備 | 自己所有の場合は、構築物(農林業用のもの)の耐用年数で減価償却を行います。 国等の所有の場合は、繰延資産として耐用年数の70%の年数で償却を行います。 |
5. | ため池 | 構築物(農林業用のもの)の耐用年数で減価償却を行います。 |
6. | 客土 | 土地の取得費となる場合があるため、税務署又は役場財務課にご相談ください。 |
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- 財務課
- 電話番号:0855-95-1193 / IP電話:050-5207-3013