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邑南町では、赤ちゃんの1歳半健診時に
誕生祝い品 おおなんみんなのつみき を贈る取り組みをしています。

“ みんなのつみきができるまで ”
このまちで生まれた木で、
このまちの人の手から
みんなの思いが一つになって、
一つのものが生まれました。
これからの未来を担う赤ちゃんへ、
赤ちゃんを大切に育てるご家族の方へ
木のもつぬくもりがエールになるように
みんなで作ったみんなのための積み木です。

「通ります。」石見養護学校木工班が作業をする木工室に入ると、すれ違う生徒たちが口々にそう声をかけてくれる。ここは積み木の製作を担う木工班が作業をする場所。安全のため人とすれ違う時はそう声をかけるように徹底されているのだそうだ。みんなきちんと作業帽と作業着を着用して、周囲にはいくつもの木工機械が並んでいる。全員が積み木の製作に関わっているわけではないがそれぞれが黙々と自分の作業に取り組んでいた。石見養護学校では週に2日作業学習という授業があり、製菓班、窯業班、園芸班、木工班それぞれが1時間目から6時間目まで丸1日作業に取り組む。この積み木のプロジェクトのはじまりは、平成27年度のおおなんドリーム学びのつどい(※)の中で石見養護学校の生徒が積み木のプレゼントを提案したことだった。「提案した生徒たちは卒業しましたが、作業班として積み木を担当する生徒たちには先輩たちが提案したことや思いを伝えた上で作業に取り組めるようにしています。様々な人とつながってこの積み木が生まれたこと、邑南町産材を使っていてこの町とも深くつながっていること、そんなストーリー性を意識することは当初から大切にしていることです。」今回お話を伺った木工班担当の平木健滋先生は、積み木のプレゼントが提案された当初からプロジェクトに携わり現在も生徒の積み木製作をサポートしている。作られた積み木は生徒たちが可能な範囲で1歳半健診時に直接渡すことも行なっている。提案した生徒たちの想いは町役場や地域の方々の協力により、長い準備期間を経て今ここにいる生徒たちの手で形になり、着実に赤ちゃんの手へ届けられている。
※「おおなんドリーム 学びのつどい」
邑南町内の小学生、中学生、高校生、大人が一堂に会し、邑南町の良さや暮らしの課題について学びまとめたことを自分たちの夢や願いを込めてプレゼンし、互いに聴き合い意見交換する場。

積み木の製作に取り組むテーブルの上には、手作りの木製の補助具が置いてあった。油性ペンで大きく「とてもゆっくり」と書いてある。「一つのパーツを毎回同じ形に維持することはとても難しいことで、教員で補助具を作り、生徒がその型に木をはめて出ている部分を削るという方法で同じ形にできるようにサポートしているものもあります。」見回すと学校の先生だけではなく、地域の木工技術をもった方が外部講師として生徒と共に作業されている。「この授業は木工製品を作ることが目的ではなくて、生徒たちが働く力を身につけるための時間なんです。うまくいかない時こそ生徒にとっての学習の場面と捉えて、困っているなという時もこちらからはあまり言いすぎずに自分から発信できるような場面設定をしたり、失敗してもいいという考えで素直にその事が言えることの方が大切で。生徒一人ひとりの様子に合わせて進めるようにしていて、その生徒の実態に応じた製品や工程をこちらが考えて担当を決めています。工程が少ない生徒もいるし複雑な工程をする生徒もいます。積み木の作業が好きな生徒もいて朝礼の時に積み木担当で良かったと言ってくれることもあります。」

2ヶ月ごとの納期がある中で、週2回の作業学習の時間の中で生徒たちが作ることのできる積み木の数は限られている。しかしながら時間をかけて積み木をつくりあげるたびに、その生徒の未来につながる力も培われていく。生徒にとっての一箱が、生徒にとっての一歩であり、それは成長著しい1歳半の赤ちゃんへの、他の何にも変えられない贈り物になる。

作業室の向かいにある部屋に入ると、塗装後に乾燥させている積み木が並んでいたり、製品に焼印を押すスペースがあったり、木工に必要な材料もたくさん並んでいる。先生が案内してくださる間も「失礼します。」と礼儀正しく生徒たちが入ってきては、忙しそうに必要な用事を済ませ出ていく。その中で奥にあるダンボールの中から付箋がついた積み木の一つを取り出して見せてくださった。「これは検品から返ってきたものなんです。全ての積み木はひとつひとつ検品にかけていて、少しのへこみや傷も安全性の面から許されません。磨きの工程ひとつとっても、磨きが足りないのも良くないし、磨きすぎもまた良くない。木の目に沿って磨かないと傷になることも生徒に気をつけるよう何度も伝えていることです。組み立て、磨き、塗装、仕上げ、焼印という工程を長い時間をかけて終わらせても検品で基準に達しない製品は渡すことができません。」

積み木は全部で13のパーツからなり、そのうち2つは邑南町で親しまれているオオサンショウウオの形をした振ると2種類の鈴の音が鳴るしかけがあるもので、他のパーツに比べると工程が多く難易度も高い。2つの木をくりぬき、中に鈴とおはじきを入れ、貼り合わせるという工程が加わる。他のパーツは町産材のヒノキを使用しているが、このオオサンショウウオの形の積み木だけは町の花である桜の木を使用していることもこだわりだ。「本当に慎重な作業の連続です。そんな意識の中で作業しているので今まで贈った積み木の不備は一度も聞いていません。」その言葉からは積み木にかける時の長さと想いが伝わってくる。積み木に使用しているニスやボンドも全てが植物性の安心なもの。隅々にまで優しさの宿るこの積み木にはきっと「もらった」ではなく「出会った」という言葉がふさわしい。

積み木製作の授業が行われている日、生徒さんたちにもお話を伺うことができた。「鈴の音が好き。」「木がいろいろな形に変わるのが楽しい。」「ニスを塗ってピカピカになるところが好き。」その表情や言葉から、積み木に流れるあたたかな温度を感じる。赤ちゃんにあげるものだから慎重に作業しなければいけないという思い、たくさんの人に大切に使ってほしいという思いが一人ひとりから伝わった。「失敗したら赤ちゃんにあげられないから悲しい。」という言葉からは、日々製作に取り組む中で様々なできごとがあり、様々な思いをしていることが素直に伝わってくる。「同じ作業をするからヤスリで磨く作業が好きです。」この言葉からはもくもくと同じ作業を繰り返すことの楽しさを感じた。積み木製作を何度も担当している生徒さんの一人は、健診時に直接積み木を渡した経験を「うれしそうだった。早く遊びたそうだった。」とはにかみながら振り返ってくれた。「本校の生徒が提案して始まった積み木のプレゼントであり、本校の生徒が作った積み木であるということを知ってもらいたいです。石見養護学校というところをまずは地域の方によく知ってほしい。そんなきっかけになればうれしいですね。」そう平木先生は話す。生徒さんや先生の何よりの励ましになっているのは、毎回積み木に入れているハガキの返信だ。「本当にうれしい言葉をたくさん書いてくださって。木工室の掲示板にも貼っているんです。」その1枚1枚が積み木の向こう側にいる人たちの力になっている。

たとえば1歳半健診で、生徒さんから直接積み木を受け取るとする。机の向こう側には笑顔の生徒さんが座っている。「大切に使ってください。」そんな言葉をかけながら渡されたとしたら、どんな言葉を返すだろうか。
きっとその言葉が生徒さんたちに届くことで初めて、「みんなのつみき」にはぬくもりが通う。この町の積み木のプレゼントは、この町のエールの交換のようだ。
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